お姉ちゃんの食卓 作:斎藤大典 脚色:益岡礼智 食事をしているセリコ。黙って見つめるモトコ。 セリコ おいしいねえ。もっちゃんのごはんはおいしいねえ。 モトコ お粗末様。 セリコ とってもおいしい。 モトコ それはよかったねえ。 セリコ うん。 モトコ お姉ちゃん、ガス料金の支払い行ってきた? セリコ うん。 モトコ うそ、払い込み用紙今朝まだ郵便物の山に入ってたよ。捨てちゃうとこだったよ。 セリコ うん。 モトコ ああやってさ、なんでもかんでも積み上げとくのやめなよ。だらしないよ。 セリコ うん。 モトコ きいてる? セリコ うん。 モトコ お姉ちゃん、おかわりは? セリコ うまい。 モトコ ・・・お姉ちゃん。 セリコ うん? モトコ しあわせ? セリコ うん。すごくしあわせ。 モトコ 姉はこんなひとです。 幸せそうな笑顔のままモトコに赤い糸をまきつけていくセリコ。 暗転 モトコ 姉とわたしは二人きりでくらしていました。それは姉にとっては幸せな生活であり、わたしに とってはなんだかちょっとだけ不幸な気分にさせられる、ぬるめの味噌汁を毎日朝食に出され るような生活でした。いろいろな意味で。まあ、そんなに嫌いではなかったけれど。 モトコの気配の消えた部屋。セリコが独りでぐずぐずないている。 セリコ ・・・もっちゃん・・・もっちゃーん。 モトコ そんなわたしたちの生活が一変したのは、わたしが交通事故にあってからでした。 セリコ ・・・おなかすいた。 モトコ それ以来、日常は非日常となり、こんどはそれが日常に。 セリコ 意味わかんない・・・。 モトコ (きいてない)姉はそれに慣れなければなりませんでした。 セリコ ごはんたべたい・・・。 モトコ 姉はご飯がつくれません。 セリコ もっちゃーん・・・ モトコ わたしも今はご飯が作れません。 セリコ もっちゃーん・・・ モトコ 姉にとってこれは、死活問題です。 セリコ もっちょーん・・・ モトコ もっちょん!? セリコ (はね起きる)もっちょん!? モトコ もっちゃん! モトコ、セリコを凝視。姉の視線がどこに向かっているか確認。 モトコ お姉ちゃん? セリコ もっちゃん。 モトコ お姉ちゃん。 セリコ もっちゃん!おかえり! モトコ た、ただいま。 セリコ やっぱり帰ってきてくれたんだ。 モトコ お姉ちゃん、あたし見えてるの? セリコ 少し太った? モトコ うそっ セリコ うそうそ。どう?もっちゃん、今元気? モトコ どう答えたらいいんだろう。 セリコ 風邪とかひいてない? モトコ ひきようがないと思う。 セリコ そうなんだ。 モトコ いや多分。 セリコ いやー。なんにしろもっちゃん元気でよかった。 モトコ 元気かなあ。 セリコ どっかまだ痛いとこあるの?血でてない? モトコ そういう意味では元気だけど。 セリコ もっちゃんあのときすごい苦しそうだったじゃない。あたし、これほんとに死ぬんじゃないかって泣いちゃったよ。 モトコ 本当にそうなったでしょ。 セリコ こうやってこう、だあーって走るベッドについてって、ばんってドア開けて、こう助けたいんだけどお医者さんには邪魔だって言 われるしなんか管踏んでるって怒られるし、ほんともう大変だったんだよ。 モトコ お姉ちゃんそれ、邪魔してたんじゃないの? セリコ あたし邪魔だった? モトコ さあ。 セリコ ・・・でもどのみち助からなかったとは思うよ。 モトコ お姉ちゃんが言わないでよ。 セリコ もっちゃあん。 モトコ いいんだけどね。別にいつ死んでもいいやぐらいに思ってたし。 セリコ もっちゃん!馬鹿なこと言わないの。 モトコ ごめんなさい。でもあたしの人生って、お姉ちゃんみたいな運のいい人生からみたら、明らかにはずれだって思ってたから。 セリコ もっちゃんに死なれたあたしのどこが運がいいの。 モトコ お姉ちゃんが死んだわけじゃないじゃない。だってお姉ちゃん懸賞ばんばん当たるし、たまにお金拾うし。 セリコ もっちゃんみみっちい。 モトコ この不景気に、ぼさっとしててもあんないい会社に入れるし。 セリコ それはあたしも、運がよかったと思う。 モトコ あたし内定一個も取れてないんだよ。 セリコ うん。じゃあ化けてでることないのに。 モトコ 別に化けてでてなんか・・・これは違うの。 セリコ あたしのことが心配だったんでしょ? モトコ 不安だけど心配はしてません。 セリコ もっちゃんの薄情者。 モトコ ごめんなさい。あのね、実はあの世へは特急つばめ号で行くのよ。ほら切符。 セリコ おお! モトコ あたし全然未練ないからさっさと行こうとしたんだ。そしたら駅の改札の先へ行けなかったの。赤い糸があたしを引っ張って・・ ・そう、赤い糸。(糸をたどりだす) セリコ 赤い糸? モトコ お姉ちゃん真面目に聞いてる? セリコ 聞いてるじゃない。 モトコ そう?とにかくね、これじゃ先に進めないから、この糸の出所を探してたんだけど・・・ セリコ ふうん。 モトコ 本当はあたしの話信じてないでしょ。 セリコ 信じてるよ。 モトコ そもそも何で、何であたし見て驚かないの。 セリコ 何で驚くの? モトコ おかしいよお姉ちゃん。 セリコ あたしおばけっていると思ってたもん。いつか見えればいいなあと思ってたし。天国も特急つばめ号で行くの知ってたし。 モトコ あっ!・・・お姉ちゃんにつながってる。 セリコ なに? モトコ 赤い糸。赤い糸お姉ちゃんにつながってる。 セリコ あたしに? モトコ お姉ちゃんのお腹。 セリコ あたしのお腹から赤い糸が出てんの? モトコ うん。どういうことかな。 セリコ もっちゃんこれね、もしかしたらあれかも知れない。 モトコ 何? セリコ あたしのおかげかもしんない。 モトコ おかげって何。 セリコ あたし信心深いじゃない。 モトコ お姉ちゃんのは迷信深いっていうの。 セリコ わたしね、実はもっちゃん死んだときお願いしたんだ、神様に。あたし一人じゃ生きていけません、おばけにしてもいいから妹を 連れてかないで下さいって。それがね、叶ったんだと思う。 モトコ どうせならおばけじゃなくて、生きかえらせてってお願いしてよ。 セリコ もっちゃん交通事故でけっこうぐちゃぐちゃだったじゃない。あれ生きかえらせたらちょっと・・・もっともだと思わない。 モトコ 全然もっともじゃない。それじゃなに?お姉ちゃんの未練が赤い糸になってあたしを縛ってるってこと? セリコ ロマンチックだねー モトコ ロマンチックじゃないっ。 セリコ もっちゃあん。 モトコ ・・・確かにね。お姉ちゃんのせいかもしれない。お姉ちゃんのお願いを意訳するとこうじゃない?あたし一人じゃご飯作れませ ん、どうか妹の幽霊をおさんどんに残して下さい。 セリコ なるほど、だからお腹から出てんだ。 モトコ お姉ちゃん! セリコ だってあたしが何人いてもご飯作れないと思うの。 モトコ いばるな。 セリコ とにかくそうと分かったら、あたしのために、お願い。 モトコ 「あたしの食生活のために」、でしょ。 セリコ そう。お願い。 モトコ いやだ。さっきも言ったけど、あたし死んでスッキリしてんの。未練もない。悟り開いて解脱しそうよ。なのになんでお姉ちゃん の食欲のためにおばけになんなきゃなんないの。 セリコ きっとね、あたしの食欲をプラス10としたらもっちゃんの悟りはマイナス7くらいなのよ。 モトコ なんであたしの悟りがマイナスなのよ。 セリコ とにかくもうこれは理屈じゃないの、現実なの。あきらめてご飯作んなさい。 モトコ 待って。(笑う)お姉ちゃん、あたしおばけよ。ほら、この世のものを触れないの。ご飯なんか作れないわ。 セリコ だっ! モトコ 残念でした。さあ早くこの赤い糸をほどいて。 セリコ もっかいお願いし直す。おばけだけど料理は作れますように。 モトコ 馬鹿なお願いしないで。 セリコ 馬鹿じゃないもん。もっちゃんのバカ。 モトコ お姉ちゃんのバカ! にらみ合う二人。 セリコ ふう。しょうがないなあ、もっちゃんは。 モトコ しょうがないのはお姉ちゃんでしょ。 セリコ はいはい、お姉ちゃんはバカで結構。でもね、いいこと思い付きました。 モトコ なに。 セリコ もっちゃん、ご飯の作り方教えて。 モトコ そんなの本とか見れば良いじゃない。 セリコ だめ、もっちゃんがあたしに教えるの。もっちゃんの味でなきゃ、あたしは満足できないの。 モトコ うそだ、どこに食べに行っても満足してたじゃない。 セリコ お腹は満足しても、こころは満足できないの。 モトコ いい加減にしてよ。 セリコ よし早速なにか教えて。 モトコ お姉ちゃんの馬鹿。 セリコ 馬鹿じゃないでしょ、あたしのこころが満たされるまでね、もっちゃんは成仏できないの。 モトコ いやー。 セリコ 肉じゃが、さばみそ、カボチャの煮物、天ぷら、きんぴら、ぶり大根、ひじき、切り干し、カブのあんかけ、くし焼き、照り焼き 竜田揚げ、だし巻卵、かれいの煮つけ、あじの塩焼き、茶わん蒸し、いなりずし、ちらし寿司、中巻、太巻き、極太巻・・・ モトコ 姉は食べることには一生懸命でした。二人暮しでご飯の担当はあたしでしたが姉のわがままのおかげで献立に困ることは一度もあ りませんでした。今回のことでも分かるように姉の考えの中心は食べることです。朝ご飯を食べ終わる前に昼ご飯のことを考えて います。ここ(頭)の中には脳味噌の代りに胃袋が入っているかも知れません。それはともかく、姉の専門は飽くまで食べる方。 こんなことになるまでわたしは姉の実力を知りませんでした。 傘を持って登場するセリコ。 モトコ お姉ちゃん、バカなマネしないで! セリコ とあっ!てあっ!(てんぷらのタネを鍋に投げ入れている) モトコ 入ってないよ、全然入ってないよ。お願いだからもっと近付いて入れて! セリコ やだ。油はねてあつい。 モトコ 投げ入れたらよけいはねちゃうでしょ。てんぷらはねそうっと滑り込ますの。 セリコ もっちゃんねえ、ちょっとうるさいよ。 モトコ 当たり前!あたしの運命がかかってるんだから。ああっ、海老が。 セリコ おしい。 モトコ なんてことすんの。お芋や椎茸ならまだしも海老を・・・ セリコ とどめはちょーこれーいとー! モトコ やめてー セリコの笑い声とともに暗転 セリコ、ボールで液体状のものを混ぜている。 セリコ だらー。 モトコ その柔らかさはコロッケじゃない。今から冷凍のやつ買ってこようよ。 セリコ でももっちゃんはおいもから作ってたじゃない。あたしはもっちゃんのコロッケが食べたいの。 モトコ それにどうやって粉まぶして、どうやって揚げるの。 セリコ このまま揚げてみようか。 モトコ やめてー。 流し込まれたいも(?)で天ぷら鍋が噴火する。セリコの笑い声とともに暗転 ぐったりしているモトコ。 モトコ 揚げ物はしばらく禁止。 セリコ もっちゃん、あたし唐揚げがたべたいなあ。 モトコ 人の話聞いてる? セリコ もっちゃんこそおねえちゃんの話聞いてる? モトコ あーあーなにもきこえません。あのねえ、もっと簡単なのからやろうよ。 セリコ えー。 モトコ えーじゃないでしょ。見てこの切符。 セリコ 特急つばめ号。 モトコ 有効期限は? セリコ 死亡時より49日。 モトコ そう、7週間。もう3週間たってんの。お姉ちゃん最初なんて言った? セリコ 4週間で料理おぼえます。 モトコ 嘘つくな、2週間でいいって言ったんでしょ。 セリコ そうだっけ? モトコ 効率良く、順序におぼえてもらうからね。そうだ、まだカレーライスやってないよ。カレーライスにしよう。 セリコ えー。今日カレーって気分じゃないよ。 モトコ あたしはものすごくカレーの気分なの。 セリコ どうせ食べられないのに。 モトコ いいの! セリコ それにカレーって皮剥いてゆでるだけじゃない。手ごたえない。 モトコ ゆでるじゃなくて煮るでしょ。それとお姉ちゃん包丁の使い方もまだ怪しいんだから十分練習になるよ。 セリコ ぶーっ。 モトコ 早く料理おぼえてあたしを成仏させて。買い物っ。 二人、店に入りカゴをもつ。 セリコ もっちゃん、あたし普通のカレーじゃなくてドライカレーがいい。 モトコ ドライカレー?いいけど苦手のみじん切りだよ。 セリコ でもただのカレーは練習にはなるけど学習にはなんないじゃない。 モトコ うん。・・・? セリコ 材料なに? モトコ ひき肉、たまねぎ、トマト、カレー粉。以上。 セリコ 以上。 レジで会計をすませ買い物を袋詰めの午後。 セリコ おおーもっちゃん、また10円ガム置き始めたよ。 モトコ 本当だ。懐かしいね。 セリコ これ食べんの好きだったよね。 モトコ 別に味が気に入ってたわけじゃないよ。いかにも不健康そうだし。 セリコ 久しぶりにやろうよ。 モトコ 何? セリコ 当てっこ、どれがでるか。 モトコ いいよ、どうせ当んないから。 セリコ そんなの分かんないじゃない。おばけになって勘が鋭くなったかも知れない。 モトコ そんな気はしない。 セリコ じゃあもっちゃん二つ候補挙げていいから。 モトコ 前に四つ挙げて当たらなかったじゃない。 セリコ 分かった。もっちゃん当たったら今すぐ解放してあげる。 モトコ えっ。 セリコ 神様へのお願い取り消してあげる。それならいいでしょ。 モトコ いいけど。・・・いいよ、やろう。・・・青。 セリコ ブドウ。 モトコ ブドウじゃなくて紫でしょ。 セリコ ほら、ブドウだ。(食う)残念だったね。 モトコ ・・・ブドウじゃなくて紫だもん。お姉ちゃんもはずれだもん。 セリコ なに言ってるの、これはブドウでしょ。 モトコ ブドウの味なんかしないでしょ。だからそれは紫。はずれ。 セリコ 味するもの。赤はりんご味だし黄色はレモン味、緑はメロンで青はラムネ。白は普通。 モトコ 普通ってなによ。普通って。 セリコ 砂糖とかそういうやつ。 モトコ お姉ちゃんねえ思い込んで食べてるから味が違って感じるの。全部同じ味。色がついてるだけで味の差なんかないの。 セリコ もっちゃんねえ、おばけになって物わかりが悪くなった。前はそんなこと言わなかったじやない。 モトコ 前は前、今は今。 セリコ もう、なんにしたってもっちゃんだってはずれなんだからね。 モトコ そうですね、そうですね。ああもうこんな賭けするんじゃなかった。 ふたり、無言で歩き家路につく。黙々と料理をすすめる。 セリコ もっちゃんはねえ、運が悪いんじゃないの。あたしが良いだけなの。 モトコ その運の良さのしわよせがあたしに来てた気がする。 セリコ でももっちゃん料理うまいしがんばり屋さんだし消しゴム便い切るのうまかったじゃない。ビデオテープの残り時間もぴたりと当てるし。 モトコ そんな生活の知恵を褒められても嬉しくない。 セリコ あれ羨ましかったんだよ。 モトコ そうなの? セリコ うん。すごいよね、もっちゃん。 モトコ ・・・・・・・。 セリコ、料理を仕上げる。 セリコ もっちゃん風ドライカレー、どうだ! モトコ うん。50点。 セリコ いや80点。 モトコ ドライカレーはカレー色なの。これ黒いじゃない。 セリコ 辛い。 モトコ カレーだもん。 セリコ 点数辛すぎ。甘めに採点しないと7週間で終われないよ。 モトコ それはそうだけど、お姉ちゃんにしっかり料理おぼえてもらいたいの。中途半端にしとくとまた呼ばれそうだし。 セリコ そんなことしないよ。 モトコ 本当? セリコ あたし我が儘言うけど嘘は言わないでしょ。 モトコ じゃあさあ、10円ガムの色当てたら放すっていうのも本当? セリコ 本当。ここまで料理できるようになったんだから、色当たったらいつでも解放してあげる。 モトコ ここまでって、今50点じゃない。7週間で終わる? セリコ 大丈夫。見事に進歩してるじゃない。それにあたし追い込みに強いタイプなんだよ。 モトコ そうだね、夏休みの宿題とか最後の3日間でやってたもんね。 セリコ もっちゃん間に合ってなかったよねえ。 モトコ お姉ちゃんにつられて遊んじゃったんだもん。 セリコ 任せて、あと3週間、ううん、2週間で完壁にしてみせるから。 モトコ 果たして、姉はみるみる上達しました。始め泡立て器で米を研いだ彼女が、今はもうほうれん草をちょうどいい加減に茄であげ、 だしを効かせた味噌汁を作り、キャベツを針のように千切りし、崩れずでも固くないコロッケを揚げました。 どう? セリコ どうだろう? モトコ おいしそうじゃない。 セリコ (味見)いい感じ。 モトコ テーブルに4品目並ぶの初めてじゃない。 セリコ そうだね。すごいよね。 モトコ 手際良くなったよ。 セリコ もっちゃんの教え方がいいから。 モトコ 手際だけじゃなく美味しくなった。 セリコ それは分かんないでしょ。 モトコ 見てれば大体分かるよ。うまくなった。 セリコ いただきます。 モトコ 先々週まではどうなるかと思ってたんだよ。もう一生、一生て変だね、ずっとここにいることになるんじゃないかってさ。 セリコ あたしを見くびっていたね。 モトコ そうだね見くびってた。火も怖がらなくなったし、むやみに調味料入れなくなったし。 セリコ それは基本でしょう。 モトコ その基本も危なかったんでしょう。 セリコ 今そんなことないもん。 モトコ そうだね、だいぶうまくなった。もうあたしいらない感じだよね。 セリコ いやそれはどうかな、まだまだあたし一人じゃ駄目だと思うよ。 モトコ いや、そんなこともない。最近うるさく言う必要なくなったもん。 セリコ まだ失敗したっきりのもあったよねえ。 モトコ それ明日やろうよ。最初に失敗したカルボナーラやろっか? セリコ 今カルボナーラ食べたくない。 モトコ じゃあ味噌入れ過ぎた鯖みそ。真っ黒にした天ぷら。 セリコ、いやいや首をふる。食べるのを止める。 モトコ まあいいや。それでさ、お姉ちゃんには大体のレパートリー教えたし、他のも応用だし。あたしの味なんてもともとたいしたこと ないんだからそろそろ・・・ セリコ おいしくない。・・・もっちゃんの味じゃない。 モトコ なに言ってんの。ぱくぱく食べてたじゃない。 セリコ 全然美味しくない。 セリコ、皿を流しに持っていき料理を次々捨てていく。 モトコ ばっ、何やってんの。 セリコ だっておいしくないんだもん。 モトコ どういうつもり。うまく作ってたでしょ。 セリコ なんだか味分かんなくなっちゃった。風邪ひいたかな。 モトコ わざと? セリコ まさか。(捨てなかったのを食べる)おいしいのかも。 モトコ 一体なんなの? セリコ じゃあいい、もううまくなったことにする。 モトコ まだ赤い糸ついてる。 セリコ 変なの。 モトコ どういうつもり。 セリコ 何が? モトコ お姉ちゃんがやってるんでしょう。早く放してよ。 セリコ そんなにそんなに離れたいの? モトコ 話そらさないで。 セリコ あたしにも分かんない。もっちゃんが認めてるんだ、あたしもうまくなったんでしょう。そうなれば勝手に切れると思ったんだ、 赤い糸。 モトコ お姉ちゃんがわざとやってるんじゃないのね。 セリコ もちろん。 モトコ じゃあどういうこと? セリコ もっちゃんこれね、もしかしたらあれかも知れない。 モトコ 何? セリコ ラザニアのおかげかも知れない。 モトコ おかげって何。 セリコ 昨日テレビでラザニア作ってんの見ちゃったんだ。おいしそうだったなー。 モトコ それが何? セリコ あたしの食欲はラザニアを求めているんだと思うの。もっちゃんが作ったラザニア食べれたらきっと完全に満足。赤い糸も自然に 切れるよ。 モトコ 本当? セリコ きっと。 モトコ でもあたしラザニアの作り方知らない。 セリコ 本買ってこようよ。「オーブン料理30選」 モトコ ・・・。 セリコ あたしももっちゃんもレパートリー増えて、こいつはgood。 モトコ 今さらレパートリー増えても。10円ガムはどうなんの? セリコ それも有効、きっと。あたしってきっかけあるとすんなり行くタイプだし。 モトコ 木当? セリコ 本当。 モトコ 本当に本当? セリコ 本当に本当。ほらっ、りんご。 モトコ 白。 セリコ また今度。 モトコ ・・・でもいいもん、このラザニアで糸切れるんだもん。 セリコ いただきます。・・・なかなかいけるよ、ラザニア。 モトコ それは良かったね。 セリコ ちょうどいいよ。レシピ通りだったらきっとしょっぱすぎたね、もっちゃんの指示に従って正解だ。 モトコ それはどうも、お誉めに預かって。おいしい? セリコ おいしい。 モトコ 満足? セリコ 満足。 モトコ まだ赤い糸ついてる。 セリコ 変なの。 モトコ どういうこと? セリコ もっちゃんこれね、もしかしたらビシソワーズのおかげかも知れない。 モトコ ビシソワーズのせい? セリコ 昨日本屋の雑誌で見ちゃったんだ。おいしそうだったなー。 モトコ 食べたくなった? セリコ あたしの食欲はビシソワーズを求めているんだと思うの。もっちゃんが作ったビシソワーズ食べれたらきっと完全に満足。赤い糸 も自然に切れるよ。 モトコ 本当? セリコ 本当。 モトコ 本当に本当? セリコ 本当に本当。ほらっ、ラムネ。 モトコ 緑。 セリコ また今度。ごちそうさま、おいしかった。 モトコ まだ赤い糸ついてる。 セリコ 変なの。 モトコ どういうこと? セリコ もっちゃんこれね、もしかしたら小籠包のおかげかも知れない。 モトコ ・・・。 セリコ 中華って普通の家庭でも作れるんだよね。出来たてっていいなー。 モトコ 食べたくなった? セリコ あたしの食欲は手作り小籠包を求めているんだと思うの。赤い糸も自然に切れるよ。 モトコ 本当? セリコ 本当。 モトコ 本当に本当? セリコ 本当に本当。ほらっ、レモン。 モトコ 白。 セリコ また今度。ごちそうさま、おいしかった。 モトコ まだ赤い糸ついてる。 セリコ 変なの。 モトコ ・・・。 セリコ もっちゃんこれね、もしかしたらスズキのパイ包みのおかげかも知れない。 モトコ ・・・。 セリコ 魚のスズキをパイで包んで焼き上げるの。すごいよねー。 モトコ 食べたくなった? セリコ あたしの食欲はスズキのパイ包みを求めているんだと思うの。赤い糸も自然に切れるよ。 モトコ ・・・。 セリコ 本当。 モトコ ・・・。 セリコ 本当に本当。ほらっ、りんご。 モトコ 紫。 セリコ また今度。ごちそうさま、おいしかった。 モトコ 赤い糸。 セリコ 変なの。 モトコ あのね、お姉ちゃん。 セリコ 本買ってきちゃった。オーブン料理60選。 モトコ こりゃあすごいや。 セリコ あとね、ついでにイターリアーンの本も買ってきた。 モトコ イタリアン三昧だ。 セリコ そして基本の和食。 モトコ 基本だ基本。 セリコ 365日のおかず。 モトコ おかずおかず。 セリコ 素敵なフレンチ。カボチャ特集。100人の餃子。・・・ モトコ気絶。 セリコ あっ、もっちゃん。だーれーかー。 セリコ退場。音楽。そして登場。 モトコ このままじゃあたし死んじゃう。もう死んでるけど。 セリコ もっちょーん、もっちょーん、もっちょーん モトコ もっちゃん。もうほっといて。 セリコ 何だれたこと言ってるの。しゃんとしなさい! モトコ おねえちゃん? セリコ そう。お姉ちゃんよ。お姉ちゃんぶっていい? モトコ え? セリコ お姉ちゃんぶるわよ。 モトコ だ、だめ。 セリコ お姉ちゃんぶるわね。 モトコ やめて セリコ だめねえもっちょんは。ほんとに見る目がないんだから。あんな男、早くふってしまいなさい。 モトコ お、お姉ちゃんらしい。 セリコ だってお姉ちゃんだもの。 モトコ でも全然意味わかんない。あんな男ってだれ? セリコ わからなくていいの。だってあたしはあなたの頭の中のお姉ちゃんだから。 モトコ あたしの頭の中? セリコ そう、もっちょんの。 モトコ もっちょんていうのやめて。 セリコ さあ、頭の外のお姉ちゃんに言えず、頭の中のお姉ちゃんに言えることはない? モトコ ・・・お姉ちゃんのバカ。 セリコ もう、しょうがないわね、もっちょんは。 モトコ お姉ちゃん一体どういうつもり、ほんとにあたしを解放する気あるの? セリコ あるわよ。・・・あとは? モトコ なのに糸切れないのは何で? セリコ お姉ちゃんにはわからないわ。・・・あとは? モトコ お姉ちゃん、あたしのこと本気で心配してる?あと一週間もないんだよ。あと一週間で時間切れで、あたしは特急つばめ号に乗り損ねて、ずっとこのままになっちゃうんだよ。 セリコ そうね。でもそれならそれでいいんじゃない、どうしてこのままじゃいけないの。 モトコ それだ。お姉ちゃんがそんなふうに考えてるから糸切れないんだ。 セリコ そうかしら。 モトコ なにが。 セリコ そんなふうに考えてるのはお姉ちゃんだけなのかしら。 モトコ ---あり得ません。あたしはさっさと解放されたいんだから。 セリコ ふうん。 モトコ なにそれ、なにふうんて。 セリコ あのね、頭の中のお姉ちゃんはお姉ちゃんであってお姉ちゃんでないのよ。 モトコ ええ? セリコ ここはもっちょんの頭の中。ということは? モトコ ええええ? セリコ お姉ちゃんはお姉ちゃんであり、同時にお姉ちゃんはもっちょんでもあるの。 モトコ 全然わかんないよ? セリコ もう、しょうがないわねえ、もっちょんは。 モトコ しょうがないのはお姉ちゃんでしょ。あーなんだか脳味噌がぬるぬるしてくる気がする。 セリコ じゃあ今晩はねばついたお献立にしようか。 モトコ やめて。 セリコ もっちょん、何をそんなに苦しんでるの? モトコ 今の状況をなんとか抜け出したいの。 セリコ もっちょんなぞなぞやろうか。 モトコ もうついてけない。 セリコ じゃあクイズ。 モトコ 同じだ。 セリコ おねえちゃんの幸せは? モトコ 食べること。 セリコ もう一声! モトコ おいしい料理を食べること? セリコ うーん、もう一声っ! モトコ あたしのおいしい料理を食べること! セリコ ブラボー。 モトコ ・・・それが? セリコ もっちょん言ってたでしょ、「お姉ちゃんねえ重いゴンドラなめてるから、アジアンチックに勧進帳」 モトコ 言ってません。 セリコ 言ってません。「思い込んで食べてるから味が違って感じるの。」って。 モトコ じゃあ、お姉ちゃんに「もっちゃんのおいしい料理」と思い込ませたものを食べさせればいいってこと?なるほど!道がちょっと開けた!あれっ、お姉ちゃんどこ行くの? セリコ 試してみれば? モトコ ・・・かっこいい。ちょ、ちょっと待ってよ! セリコ退場。それを追ってモトコ退場しようとすると現実のセリコ登場。 セリコ おおもっちゃん起きたか。 モトコ ・・・お姉ちゃん? セリコ いやーもっちゃん死んだかと思ってびっくりしちゃった。良かったあ。 モトコ 幸か不幸かまだここにいるみたい。 セリコ 幸せに決まってるでしょ。 モトコ あたしにも幸せ来るんだ? セリコ あたしがもっちゃん起きますようにって神様にお願いしたの。 モトコ お姉ちゃんがお願いすればあたしにも幸せが来るわけだ。 セリコ さあもっちゃん。ご飯買いに行こう。 モトコ もう食べること? セリコ 心配してたらお腹減っちゃった。疲れた? モトコ ううん。よし行こう。 セリコ 本当は疲れてない? モトコ 本当に疲れてない。 セリコ 本当? モトコ 本当。 セリコ 本当に本当? モトコ 本当に本当。・・・あっ、この砂糖は。 セリコ 何? モトコ 何でしばらく置いてなかったんだろう。これこそあたしが選びに選び抜いた砂糖だったのよ。これを使えばもうお姉ちゃんの料理も言うことなし、完壁にあたしの、あたしの味になるよ。 セリコ それはすごい。 モトコ さあ買った、そして使った。 セリコ よし。普通。 モトコ 青。・・・このパターンは。 セリコ また今度。ごちそうさま、おいしかった。 モトコ まだ赤い糸ついてる。 セリコ 変なの。 モトコ よし買い物行こう。あっ、この醤油は。何でしばらく置いてなかったんだろう。これこそあたしが選びに選び抜いた醤油だったのよ。これを使えばもうお姉ちゃんの料理も言うことなし、完壁にあたしの、あたしの味になるよ。 セリコ それはすごい。 モトコ さあ買った、そして使った。 セリコ よし。レモン。 モトコ 白。 セリコ また今度。ごちそうさま、おいしかった。 モトコ まだ赤い糸ついてる。 セリコ 変なの。 モトコ よし買い物行こう。あっ、この本みりん風調味料は。何でしばらく置いてなかったんだろう。これこそあたしが選びに選び抜いた本みりん風調味料だったのよ。これを使えばもうお姉ちゃんの料理も言うことなし、完壁にあたしの、あたしの味になるよ。 セリコ それはすごい。 モトコ さあ買った、そして使った。 セリコ よし。メロン。 モトコ 黄色。 セリコ また今度。ごちそうさま、おいしかった。 モトコ どうして!?どうして切れないの、赤い糸。 セリコ 変なの。 モトコ お姉ちゃんのお腹は何を食べれば満たされるの?どれくらい食べれば満たされるの?松茸100本?キャビア10トン?一体どうしたらあたしを放してくれるの。 セリコ 分かんない。 モトコ 分かんないじゃないでしょう。自分のお腹よ、もっと真面目に考えてよ。 セリコ 考えてるよ。 モトコ 考えてない。お姉ちゃんどうせあたしのことだと思ってちゃんと考えてない。 セリコ そんなわけないでしょう。もっちゃんのことだからこそ真面目に考えてるよ。 モトコ お姉ちゃんがご飯以外で真面目にもの考えてるとこなんて見たことない。 セリコ 真面目に考えてるかどうか傍から見てたんじゃ分かんないでしょ。 モトコ そんなことない。真面目に考えてるときっていうのは眉間にしわがよるものなのよ。 セリコ なあにそれ。考えてるっていうのはこういう格好になってるときでしょう。 モトコ それは首を寝違えたお腹の痛い人でしょ。 セリコ これでいいのよ。 モトコ やっばりお姉ちゃん真面目に考えてない。 セリコ 考えてる。 モトコ 自分のことでしょ?何がどうなれば満足か分かんないわけないもん。 セリコ だって本当に分かんないんだもん。あれ食べてもこれ食べても、食べても食べても糸切れないないんだもん。なに食べてもおいしいしなに食べてもおいしくないし。 モトコ なにわけ分かんないこと言ってんのよ。 セリコ わけ分かんないからわけ分かんないこと言ってんの。 モトコ もうお姉ちゃんの存在が一番わけ分かんない。 セリコ お姉ちゃんの存在まで言い出す?それを言い出したら生命の存在と宇宙人の存在確率までお話が行っちゃうでしょ。 モトコ 行かない!どうやっても行かない。あと二日だよ、二日で時間切れだよ。あたし特急つばめ号に乗り損ねて、永久にこのままになっちゃうんだよ。 セリコ 永久じゃないよ。あたしが死んだらあたしの切符あげるから、特急つばめ号。 モトコ それでもあと60年くらいはこのままなんだよ。 セリコ もうそれでいいんじゃない。なんでこのままじゃいけないの? モトコ やっぱりだ。そんなふうに考えてるんだ。 セリコ なんでこのままじゃいけないの? モトコ そんなふうに考えてるから糸切れないんだ。お姉ちゃんはあたしのことを真面目に考えてない、お姉ちゃんはあたしのことを真面目に心配してない。自分のことしか考えてないんだ、あたしの気持ちなんか考えてないんだ。 セリコ 考えてる。 モトコ 自分のことをね。お姉ちゃんの願う幸せは自分の幸せでしょ、お姉ちゃんの叶う幸せは自分の幸せでしょ。それが当たり前なんだろうけどそれはそばにいるあたしを不幸にさせるの。 セリコ それはね逆恨みって言うんだよ。 モトコ なんでこのままじゃいやなのか言ってあげる。あたしもうお姉ちゃんと一緒にいたくないの。最初はただこの世界があたしとお姉ちゃんの二人だけになるのがいやだったけど、今はそれ以上。二人だけになるにしてもお姉ちゃんとだけはいや。お姉ちゃんみたいに我が儘でお姉ちゃんみたいに無神経でお姉ちゃんみたいに運がよすぎる人と一緒にいられない。 セリコ もっちゃんのバカ。 モトコ お姉ちゃんのバカ。 セリコ どこ行くの。 モトコ お姉ちゃんのいないところ。 セリコ 駄目、トイレはあたしがこもるの。(バタン) モトコ あたしが先に入ろうとしたんでしょ。 セリコ 知らない。入ってこないでね。 モトコ 鍵かけても無駄よ。あたしおばけだもん。 セリコ もー。出てけ。出てけ。 セリコ調味料棚から砂糖をもって来てまく。 モトコ 何やってんの。 セリコ 塩でもっちゃん追い払うの。 モトコ 赤いふたは砂糖でしょう。 セリコ あっ。 モトコ 今さらそんな間違いしないでよ。 セリコ もっちゃんの砂糖・・・ セリコ慌ててかき集める。 モトコ もう使えないでしょう、やめなさい。 セリコ でももっちゃんの砂糖が。 モトコ お姉ちゃん、信じてたの? セリコ なにを? モトコ その砂糖、別にたいしたもんじゃないんだよ。お姉ちゃん自分の味に自信がないみたいだから信じ込ませるためにと思って。 セリコ 騙されると思ったか。 モトコ 騙されてたじゃない。 セリコ うん。 モトコ じゃああたしの味は作れてたって信じてたの? セリコ うん。 モトコ 心から信じてたのね。 セリコ というか、作れてたよ。 モトコ お姉ちゃんが求めていたのはあたしの味なんでしょ?それをたらふく食って糸切れないなんて・・・最初に言ってた食欲があたしを縛り付けてるって言うのは嘘だったの? セリコ 嘘じゃないもん。嘘じゃないけど間違いだったかもしんない。 モトコ おんなじだ。 セリコ でもあたしにはそうとしか思えなかったんだもん。もっちゃんもういないと思ったらお腹すいてきたし、もっちゃんもういないと思ったらお腹ぐうーって鳴ったし、ギュっとなったし、しまる感じがしたし。だからあたしのお腹ともっちゃんはつながってるはずなの。 間 セリコ もっちゃんのバカ。 モトコ お姉ちゃんのバカ。・・・お姉ちゃん。お姉ちゃん死んだら切符くれるって本当? セリコ 本当。 モトコ お姉ちゃんはどうするの。 セリコ あたし運がいいから間違って2枚くらい切符もらえると思うんだ。 モトコ そうか。そうかもね。 セリコ きっとそうなんだよ。 モトコ きっとそうだね。 セリコ もっちゃん? モトコ なるようにしかならないよね。 セリコ ・・・・・・・。 モトコ じゃあ明日・・・明日なに作ろうか。 セリコ もっちゃん風びっくり餃子。 モトコ お姉ちゃん食べることしか考えてないでしょう。 セリコ そんなことないよ。もっちゃんのことも、世界情勢も考えてるよ。 モトコ 本当? セリコ 本当。 モトコ 本当に木当? セリコ 本当に本当。ほらっ。 モトコ 白。・・・だっ!? セリコ 当たった。 モトコ 当たった。 間 セリコ 良かったね。もっちゃん。 モトコ ・・・お姉ちゃん、何かお願いした? セリコ もっちゃんの幸せ願おうとするとあたしの幸せとせめぎあって駄目みたいなんだよね。だから純粋に、白が出ますようにって。最初っからこうすれば良かったのにね。 モトコ ・・・あたしもう行っていいの? セリコ うん。 モトコ 本当にいいの? セリコ うん。いいよ。 モトコ でもまだ・・・赤い糸ついてる。 セリコ どうして。 モトコ 変なの。 セリコ ・・・。 モトコ お姉ちゃんこれね、あれだよきっと。びっくり餃子。食べたくなったんでしょ? セリコ もっちゃん モトコ だってガム当たったのに糸切れないんだもん。それしか考えられないよ。 モトコ、さっさと帰ろうとする。動かないセリコ。 モトコ お姉ちゃん?どうしたの? セリコ いらない。 モトコ え? セリコ もういいよ、びっくり餃子。 モトコ だって、赤い糸・・・ セリコ もっちゃんのバカ! モトコ なんで!? セリコ バカバカバカバカバカバカバカバカ! モトコ 8回も言うこと無いじゃない! セリコ だってバカなんだもん。 モトコ だから、何でバカなの!? セリコ もういいの!もういいんだから、はやくつばめ号に乗りなさい! モトコ 乗れないよ!まだ赤い糸付いてるもの。 セリコ 切れてるじゃない。切れてるはずだよ赤い糸。 モトコ 切れてないよ。 セリコ びっくり餃子もいらない。ガムも当たったの。切れてないわけ無い。 モトコ 切れてないよ。現に・・・ モトコの手の中で赤い糸がぷつりときれる。 セリコ あたしがお祈りしなくても、もっちゃんにも幸せ来るんだよ。 モトコ ・・・幸せ? セリコ うん。良かったね。 モトコ ・・・頭の中のお姉ちゃんが言った通りだ。 セリコ 何? モトコ 糸切れなかったのは、お姉ちゃんのせいだけじゃなかったんだ。 セリコ ・・・? モトコ そんなに、不幸でもなかったよ。 セリコ ありがと、もっちゃん。 モトコ おねえちゃん、あたしがいなくなってもほんとに平気? セリコ 平気じゃないけど大丈夫。 モトコ 本当? セリコ 本当に本当。 モトコ あと1日あるよ。何かする? セリコ いいよ。そこの角まがったらもういいや。 モトコ ・・・。 セリコ お別れしよう。 歩く二人。 セリコ じゃまたね。元気でね。 モトコ またも、元気もないのよ。 セリコ うん。バイバイ。 モトコ バイバイ。 左右に消える姉妹。